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元興寺
猿沢池の南方、昔の町並の面影をとどめる「ならまち」の一角に、元興寺の極楽坊があります。元興寺は、蘇我馬子が飛鳥の地に建てたわが国最古の寺院、法興寺(飛鳥寺)を平城京に移したものです。奈良時代の後半にはほぼ伽藍を整えたとみられます。南大門を入ると直ぐに中門があり、右手東の方に塔、左手西方に小塔院がありました。中門は講堂と回廊で結ばれ、中に金堂が建っていました。講堂の後ろ鐘楼をはさんで東西に大坊と小子房(各2)から成る僧坊があり、その後ろに食堂がありました。
平安時代の中ごろから元興寺は衰え、浄土教が広まるにつれてその中心は極楽坊に移っていきました。極楽坊は僧坊の一郭(東室南階大坊)でしたが、奈良時代に智光(ちこう)が画工に描かせた浄土曼荼羅(智光曼荼羅)が安置されていたからです。平安時代の末に本堂と禅室に改装されましたが、1244年(寛元2)本堂が東向きに改造され、同じころ禅室も改修されました。極楽坊で営まれた念仏講が鎌倉時代にいちだんと発展し、極楽坊は庶民の信仰の場になっていきました。
1451年(宝徳3)におこった土一揆で、金堂や小塔院などが焼失しました。極楽坊と五重塔・観音堂は残りましたが、焼け跡に民家が進出してきてまちになってしまいました。そのため元興寺は、極楽坊と五重塔・観音堂の二つに分かれました。1859年(安政6)、五重塔と観音堂が焼け(この系譜をひく寺院も元興寺と称しています)、古くからの建物は極楽坊の本堂と禅室だけになりました。屋根の一部に飛鳥法興寺から移されたとみられる瓦が用いられていて、今はごくわずかな行基葺の例をみることができます。なお禅室は中央の間を戸口とする僧坊の形式を伝えています。
(近鉄奈良駅から徒歩10分)
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